2.機能性リポソームの開発と薬物デリバリーシステムへの応用

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  リポソームは、リン脂質からなる数10〜数100nmの粒径をもつ微小なカプセルであり、その内部に様々な分子を封入することができると共に、生体適合性や生分解性にも優れていることから、その発見以来、薬物や生理活性物質の理想的な運搬体と考えられてきました。リポソームは、そのサイズから、体内の標的部位に薬物を選択的に送達する、部位特異的キャリアに適しています。
  薬の効果を最大限引き出すために、臓器・組織レベルあるいは細胞の内部まで薬物送達の正確なコントロールを実現する新しいリポソームテクノロジーが必要とされています。薬物送達システムとしてのリポソームの有用性をより高めるために、高度な機能をもつリポソームとして、(a)温度感受性リポソームおよび(b)膜融合能をもったリポソームの開発と応用について研究を進めています。

(a)温度感受性リポソーム

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  温度に応答して、親水性〜疎水性変化をする温度感受性高分子が知られています。このような高分子でリポソームの表面を修飾することによって、リポソーム内部に封入した薬物の放出を温度によって制御できるリポソームや細胞への親和性を温度によって制御できるリポソームを作製することができます。体温より少し高い温度(例えば40℃付近)で親水性〜疎水性変化をする温度感受性高分子で修飾したリポソームは、 体外からの局所的な加温によって、体内での薬物送達を制御できる運搬体として利用することが可能です。様々な温度感受性高分子で修飾したリポソームを作製し、そのドラッグデリバリーシステムへの応用や癌化学療法への適用について研究しています。さらに、リポソームに可視化機能を付与することで、パーソナルな癌化学治療への展開を行っています。 →論文リストへ

最近の論文から


  • 河野健司, "リポソームエンジニアリング:高機能化・高性能化への挑戦", Drug Delivery System, 31, 331-342 (2016).
  • 河野健司, 弓場英司, 「高分子の表面修飾による機能性リポソームの設計」, 膜, 36, 183-190 (2011).
  • K. Kono, S. Nakashima, D. Kokuryo, I. Aoki, H. Shimomoto, S. Aoshima, K. Maruyama, E. Yuba, C. Kojima, A. Harada, Y. Ishizaka, "Multifunctional liposomes having temperature-triggered release and magnetic resonance imaging for tumor-specific chemotherapy", Biomaterials, 32, 1387-1395 (2011).
  • K. Kono, T. Ozawa, T. Yoshida, F. Ozaki, Y. Ishizaka, K. Maruyama, C.Kojima, A. Harada, S. Aoshima, "Highly temperature-sensitive liposomes based on a thermosensitive block copolymer for tumor-specific chemotherapy", Biomaterials, 31, 7096-7105 (2010).