パーソナルな癌化学治療を目指して MRIで見える温度応答性リポソーム

  標的部位におけるリポソームの集積量は時間とともに変化します。したがって、温度応答性リポソームによって効率よく抗癌剤を標的腫瘍部位にデリバリーするためには、生体内におけるリポソームの挙動をモニターできることが有効です。そこで、MRI造影剤であるガドリニウムを結合したデンドロン脂質を組み込んだ温度応答性リポソームを開発しました。
担癌マウスにこのリポソームを投与し、MRIによって腫瘍への集積過程を追跡したところ、腫瘍におけるMRシグナル強度が増加し、リポソームは時間とともに腫瘍部位に集積すること、また、リポソームの腫瘍への集積効率はリポソームの粒径に影響されることがわかりました。
 このような可視化機能をもつリポソームを用いることで、リポソームによる抗癌剤デリバリーの過程がリアルタイムで追跡できることから、腫瘍集積量が最大になる最適のタイミングで加温による抗癌剤放出を誘導することで抗癌剤の効果を最大限引き出すことが期待されます。また、患者さんにとって最も良く腫瘍に集まるリポソームを選ぶことも可能になります。
 このような体内における情報を発信するキャリアは患者個人によって異なる病巣に対して的確に対応できるパーソナルな抗癌剤治療につながるものと期待できます。
多重機能性リポソーム:MRIで可視化でき、温度応答して抗癌剤を放出する図

多重機能性リポソーム:MRIで可視化でき、温度応答して抗癌剤を放出する。

  Biomaterials 32, 1387 (2011)


リポソームによる抗癌剤デリバリー

リポソームによる抗癌剤デリバリーの過程がリアルタイムで追跡できることから、
腫瘍集積量が最大になる最適のタイミングで加温による抗癌剤放出を誘導することで
抗癌剤の効果を最大限引き出す。




MRI追跡

マウスの癌病巣へのリポソームの集積の様子をMRIで追跡。
癌病巣におけるMRIのシグナル強度が強くなり、リポソームが集まってくることがわかる。




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