pH応答性リポソームによる細胞内デリバリー経路

  pH応答性リポソームは、弱酸性pH環境において不安定化して内包物質を放出したり、膜融合するリポソームです。したがって、このようなリポソームは、抗原提示細胞の内部に抗原を導入するために用いることができます。リポソームは主にエンドサイトーシスと呼ばれる細胞の食作用によって抗原提示細胞に取り込まれます。通常のリポソームでは、この経路で取り込まれるとエンドソームを経てリソソームで分解されるため、内包抗原もそこで分解されてMHC classU経路の抗原提示を誘導します。しかし、pH応答性リポソームは、弱酸性の内部環境をもつエンドソームにおいて不安定化してエンドソーム膜を乱したりあるいは膜融合することによって、細胞内部に抗原を導入することで、抗原のMHC classTへのクロスプレゼンテーションを促進することができます。一方、細胞性免疫を誘導するためのもう一つの方法として、抗原をコードした遺伝子を細胞に導入することによってサイトゾル中に抗原タンパク質を発現させる方法が考えられます。遺伝子はそれ単体では細胞膜を通過できませんが、pH応答性リポソームを用いることで遺伝子を細胞内部に導入できます。エンドソームの弱酸性pHに応答した膜融合によって遺伝子のサイトゾルへの移行を促進し、効果的に遺伝子発現させ、内在性抗原として認識させることでMHC classT経路の免疫を誘導することが可能になります。

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