大阪府立大学 電気化学研究グループ

研究内容

走査型電気化学顕微鏡を用いる酸素還元反応機構解析

 酸素は空気中から大量に取り込めるエネルギー源です。酸素を利用する電池として燃料電池や空気電池と呼ばれる次世代の電池があります。これらの電池が酸素をエネルギー源として使用する場合には、酸素を還元して電子を取り出します。このような反応を酸素還元反応と呼びますが、反応速度が遅いため取り出せる電子が少ない、つまり電池に流せる電流が低いという問題が知られています。そこで酸素還元反応を速くするために様々な触媒の研究が行われています。
 電池に酸性の電解液を使用した場合では主に白金が触媒として使用されています。これは貴金属以外の金属では酸に溶解してしまうからです。しかし、アルカリ性の電解液を使えば、鉄やマンガン、ニッケル、コバルトなどの遷移金属でも溶解することなく触媒として使用することができます。白金は埋蔵量が少なく、価格も高いためこのような非白金触媒が注目されています。
 塩基性溶液中の酸素還元反応は主に以下の二つの反応メカニズムに分けられます。

O2 + 2 H2O + 4 e- → 4 OH-  (1)

O2 + H2O + 2 e- → HO2- + OH-  (2)

ここでHO2-はアルカリ性溶液中での過酸化水素です。過酸化水素が発生すると電極や電解質が劣化するだけでなく、酸素還元反応によって取り出せる電子の数も少なくなってしまします。そこで酸素還元触媒を評価するために酸素還元反応中に発生する過酸化水素を調べる必要があります。  走査型電気化学顕微鏡は非常に小さな電極(マイクロ電極)をサンプルに近づけて、サンプル表面の局所的な化学物質を検出できる装置です(図1)。マイクロ電極を動かして化学物質の分布を顕微鏡のように調べることができます。これを用いて図2のように酸素還元触媒から発生する過酸化水素を分析し、触媒の能力を調べる手法を研究しています。

走査型電気化学顕微鏡を用いる酸素還元反応機構解析



参考文献
1. R. Teranishi, E. Higuchi, M. Chiku, H. Inoue, ECS Trans., 41, 2179 (2011).

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