膜融合性リポソームによる細胞内デリバリー

  リポソームは、細胞膜と共通の構造であるリン脂質二重層膜で出来ているため、細胞膜と融合させることが可能です。このようなリポソームは、膜融合性リポソームと呼ばれます。細胞と融合するリポソームは、内部に封入した物質を細胞の中に運ぶことが出来ることから、遺伝子やタンパク質などの細胞膜を透過することの出来ない生理活性物質を細胞内に導入するデリバリーシステムとして重要です。
 膜融合を利用して細胞の内部に物質を運搬することの出来るリポソームには、2つのタイプがあります。一つは、細胞膜と直接融合して、内部に封入した物質を細胞内に導入するリポソームです。また、もう一つは、細胞の食作用(エンドサイトーシスという)によって細胞に取り込まれた後で、エンドソームと融合して内包物質を細胞内に導入するリポソームです。リポソームはエンドサイトーシスによって細胞に取り込まれると、エンドソームという細胞内小器官の中に閉じ込められますが、このリポソームは、エンドソームの内部が酸性であることを利用して、そこでエンドソームの膜と融合して内包物質を細胞内に放出します。このようなリポソームは、酸性環境下で膜融合性となることから、pH感受性リポソームと呼ばれています。
 通常、リポソームは細胞と簡単には融合しません。従って、このような融合性リポソームを作るためには、様々な工夫が必要です。私たちは、膜融合を引き起こす活性をもつ高分子を利用して、膜融合性リポソームを作製しています。

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