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2.刺激応答性高分子材料の作製

  刺激応答性材料はピンポイントで薬物を放出するためのDDS材料として非常に有用です。そこで、デンドリマーや多分岐ポリマーを用いて、様々な刺激に応答する高分子材料の作製を行っています。

 

 2−1.光応答性材料

  医療分野においてX線などの光技術は古くから利用されてきました。近年、患者の生活の質(QOL)の向上をキーワードとした医療技術の開発が盛んに研究されており、治療時の苦痛を軽減させるための非侵襲性、低侵襲性な医療として注目されています。光に応答する材料としては、毒性が低い金ナノ粒子が挙げられます。金ナノ粒子は可視領域から近赤外領域の光を吸収し、熱エネルギーへと変換する性質を持っています。したがって、金ナノ粒子を患部まで送達して光を照射することで患部での選択的な治療を行うことができます。そこで、上記のPEG修飾デンドリマーを鋳型として金ナノ粒子を作製しています。PEG修飾デンドリマーを利用することで、患部にまで金ナノ粒子を送達することが可能になると考えられます。また、様々な条件で金ナノ粒子を作製することにより、様々な波長の光に応答する光応答性材料を作製しています(図5)。
  また、X線CT増影剤としての金ナノ粒子内包PEG化デンドリマーの研究も行っています。

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  • Kojima, et al, Colloids and Surf. B: Biointerfaces, 81, 648 (2010).
  • Umeda, et al, Bioconjugate Chem., 21, 1559 (2010).
  • Kojima, et al, Nanotechnology, 21, 245104 (2010).
  • Haba, et al, Langmuir, 23, 5243 (2007). (河野研での研究成果)

 

金ナノ粒子の成長反応制御

図5 金ナノ粒子の成長反応制御

 

 2−2.温度、pH応答性材料(図6)

  生体においては、温度はハイパーサーミアと呼ばれる装置によって制御することができ、pHは生体内の組織や細胞内小器官によって異なることが知られています。このように、温度やpHに応答する材料は生体内で制御しやすいためDDS材料として非常に有用で、これまでに様々な物質の研究がなされてきました。 我々はデンドリマーよりも合成が簡便でより生体適合性の高いポリグリセリンの多分岐ポリマーを主骨格に選択しました。そして、pHに応答する部位としてカルボキシル基を、温度に応答する部位としてN-イソプロピルアミド基を、ポリグリセリンの末端水酸基に結合させることによって、温度及びpHに応答する機能性高分子の合成を行いました。結合分子の構造を最適化することにより、体温付近で応答する分子の作製を行っています。

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  • Kojima, et al, J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem., 48, 4047 (2010).
  • Kojima, et al, Bioconjugate Chem., 20, 1054 (2009).

 

ポリグリセリンを用いたpH/温度応答性高分子

図6 ポリグリセリンを用いたpH/温度応答性高分子