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1.デンドリマーを用いた薬物運搬体の作製

 1−1.薬物運搬デンドリマーの作製

(大阪府立大学大学院工学研究科応用化学分野河野研究室での研究成果)

  デンドリマーは分子量や構造を制御できる特徴的な合成高分子です。これを利用したドラッグデリバリーシステム(DDS)材料の作製を行っています。薬物運搬体として利用するためには、生体適合性が必要となります。そこで、デンドリマーの末端に生体適合性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)を結合させたPEG修飾デンドリマーを合成しています。そして、そのデンドリマーの内部空間を利用して、抗がん剤や光増感剤などを内包できることがわかりました(図3)。内包した物質を安定に保持したり、その放出を制御するために疎水性アミノ酸やシステインを導入したデンドリマーなどを作製し、その放出制御も行ってきました。
  一方、薬物を共有結合によって結合したPEG修飾デンドリマーも作製しました。図4に示すとおり、グルタミン酸を有するPEG修飾デンドリマーのグルタミン酸側鎖にアミド結合とヒドラゾン結合を介して、抗がん剤アドリアマイシンを導入しています。ヒドラゾン結合はpHが酸性になると結合が解裂するので、アミド結合と比較して効果的な薬理活性が見られました。

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  • Kojima et al, Bioconjugate Chem., 11, 910 (2000).
  • Kojima et al, Macromolecules, 36, 2183 (2003).
  • Kojima et al, Bioconjugate Chem., 19, 2280 (2008).
  • Kono et al, Polymer, 49, 2832 (2008).
  • Kono et al, Biomaterials, 29, 1664 (2008).

 

PEG修飾デンドリマーに内包される物質

図3 PEG修飾デンドリマーに内包される物質

 

ヒドラゾン結合を介した抗ガン剤(ADR)の結合 

図4 ヒドラゾン結合を介した抗ガン剤(ADR)の結合

 

 1−2.薬物運搬デンドリマーの可視化と体内動態の解析

  PEGは生体適合性を有するだけでなく、体内に存在する細胞との非特異的な吸着も抑制することが知られています。PEG鎖長やデンドリマーの世代数の異なるPEG修飾デンドリマーの体内動態について検討したところ、PEG化によって血中滞留性が著しく向上することが明らかとなりました。長いPEG鎖、大きいデンドリマーからなるPEG修飾デンドリマーの方がその血中滞留性が高いことがわかりました。現在は、PEG修飾デンドリマーの可視化によってモデル動物内での体内動態のイメージングを行っています。

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  • Kojima et al, Nanomedicine, 7, 1001 (2011).(NIHとの共同研究)
  • Kojima et al, Int. J. Pharm., 383, 293 (2010).(NIHとの共同研究)